BBKY-weeekly

画文業・ばばかよが小4双子と暮らし流れゆく日々のなか、何かしら記していきます。

死なないつもりの夏休み

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今年の夏はひどく体調を崩して一時はどうなることかと思った。

いつも通り家事育児をこなすのが困難になり、40代後半の更年期の娘が母に甘え滋賀からヘルプに来てもらったりもした。77歳の母は喘息が持病なのだが、新しい処方薬が症状に合い60代のときよりむしろ元気で、止めるわたしをふりきって破れた障子を張り直すほどだった。

通常時の20%のエネルギー体となり下がったわたしは、自転車で10分の海、プール、日帰り旅行、好きな山登りにさえ行かなかった(ダンナが子どもを海に連れていった)。家の崖側の竹薮に葛のつたが絡まり放題で、日に日に景観がワイルドさを増していく。夏は1日に1m近く成長するといわれる葛のつるが竹薮より侵攻、フェンスをくぐり駐車スペースのマイカーに迫っても駆除もせず、ワイルドサイドに面した簡易縁側で涼む。猛暑日でも夕方には風が通る。茂みから♪ホーホケキョと見事なさえずりのBGMをうぐいすが提供、うぐいすは真夏もこんなに鳴くものなのだな。全国的には8月24日、27日あたりに小学生の夏休み終了の学校も多いというのに、逗子はぎっちり8月31日まで夏休みで、エネルギー不足の保護者には特に長すぎる。

 

何もしないで夏が終わり、ゆるやかに体調が戻ってくるのを感じた。友人に本のおすすめを求めると、友達A子が「買ったまま放置してた横尾忠則のエッセイを読んでいる途中なんだけど、やっぱり横尾おもしろいw」と思い出し笑い。『言葉を離れる』推してくれる。「今、横尾かぁ~」と拾いにくいボールを投げられた感じだったが、A子がにやにやするほどの読後感に釣られ横尾を読むことにする。本、音楽、深煎りコーヒー豆、パン、人、の好みが近いA子のリコメンはわたしにとって当たりが多い。

10年以上前、東京都現代美術館での横尾忠則展とトークショーをA子と見たこともある。確かわたしたちは客席の中段中央あたりの席で、横尾さんが1万枚以上収集中の滝のポストカードとタカラヅカのプロマイドに夢中という話を聴いた。A子はわたし以上に横尾ファンで、トーク終了後の質問コーナーで大胆にも挙手「今、横尾さんが楽しいことは何ですか?」という真に知りたいことでありながら展覧会とは関係ない質問をし、横尾さんからのドライな回答に肩を落とした記憶が呼び起こされる。

『言葉を離れる』はA子が読み終わり次第貸してくれる約束になったのに待ちきれず、とりあえずの横尾として『死なないつもり』という最新の新書を読み始めた。『死なないつもり』がもう爆笑! 電車移動中読書にもかかわらず何度も吹いてしまう。A子のリコメンは今回も大当たりだ。

一番笑ったのが第3章「毎日が仏教世界」の132P、横尾さんが足の骨折入院生活中に病院内コンビニで購入した週刊誌のゴシップを楽しんでいた話。ベッキーの不倫騒動スキャンダル記事を“自分がベッキーだったら”→“このまま引退”or“しばらく謹慎して復帰”or…と、自分の身に置き換えて想像してみていたという。横尾さんがマルセル・デュシャンでなく、ベッキーにも飛べる自由さ!  禅や瞑想や精神世界への興味について書いていた昔の感じとだいぶ違うことを80を過ぎ平気で書いている横尾さんにお~いと呆れ、自由さに50倍魅かれ、明るくゆかいな気分になる。『死なないつもり』をA子におすすめし返したら、横尾さんの自由さを同じく楽しんだものの、わたしほどには爆笑できなかったと言われた。何事も受け手側の体調やタイミング次第な部分は大きい。ちなみに『言葉を離れる』は爆笑するおもろさではないけれど、仰天エピソードと独自の思想が満載でおもしろい。体験も著述もやりきった上での「言葉(追体験)より体験が上回る」に説得力がある。横尾さんのように三島由紀夫とUFOを呼んだり、ジョン&ヨーコのホームパーティに呼ばれるミラクル体験は今後きっとなく、横尾さんの追体験がわたしの実体験をどうにも上回る。けれど、しょぼい自己体験も否定せず大事にしまっておこう。

そして8月末からいきなり秋めいた。夏中一度も作らず飲みたいとも思わなかったお味噌汁を、肌寒いくらいの朝に美味しいな~と味わう。うちでストップさせている回覧板を今日こそは回そう。