BBKY-weeekly

画文業・ばばかよが小4双子と暮らし流れゆく日々のなか、何かしら記していきます。

焼きたてパンと平和でない日々

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息子が通う小学校では、10月中旬に催される運動会に向けて練習が連日行われている。リレーの選手選考があったり普段より走る機会が多かったせいか、前の晩に息子・たーくんが突然「おれ、朝走ることにする」と言いだした。うちの双子は足が遅い。やつの提案にあわせ、9月15日の朝から双子とわたしでジョギングを開始。

朝食前、午前6時45分ごろ玄関前で3人がまちまちにあいまいな準備体操。どこまでをコースにするか決めていなかったため、「坂を下りきって大通りにぶつかるパン屋の前の「止まれ」までいって戻るでいい?」と声をかけ走りだす。1本目の角を左折し、坂を下りはじめた2本目の電信柱で、たーが立ち止まる。「ここまでだと思ってた!」

たーのここまで、は坂を下りはじめたばっかりの100mにも満たない地点で、まさかの短さで折り返す想定をしている小2に呆れる。「この短さじゃ走ったことにならないから、パン屋の前の「止まれ」までがんばりな」。片割れに付き合うかたちで走ることになった、わーくんがすんなり走り、たーは、その後も疲れるだの、こんな長いんだったら走りたくなかっただの、さんざん文句を垂れる。わたしは、どやし励まし、遅い足に並走し、走る以外で気力を空費し家に戻る。

せっかくはじめたことなので、雨の日以外は続けるようにジョギング表を作って貼る。朝ジョギングを提案した本人のたーくんが、ほぼ毎度ぶつくさ言う。

 

鬱屈した気分のときに、パンを作りたくなる。冷蔵庫内に自作の干しぶどう酵母瓶を放置したまま、「白神こだま酵母ドライ」という水に溶いて強力粉に混ぜるだけの酵母でパン種を作る。白神こだま酵母について、秋田県青森県の県境にまたがる白神山地から発見された野生酵母であると神々しい説明があるが、山奥でどのように酵母が発見されるものか想像がつかない。わーくんがぼくも作ると申し出る。生地のこね方は、教えるわたしも素人なので、子がやればさらにむちゃくちゃ適当になってしまうわけだが、子どもの手の常在菌が作用してかパン生地の発酵がうまくいく。2次発酵をど忘れして焼いたパンは、それでも美味しかった。パンが焼ける匂いが階段をつたって2階に広がっている。

 

夕飯の洗い物と風呂の支度をしていると、「おかあさん、まっくす鈴木って知ってる? すごいよ!」「まっくすは本名じゃなくて、ジャイアント白田って人がつけたニックネームなんだって」と、2階から降りてきた、たーくんが興奮気味に話かけてきた。わたしが知ってるのはジャイアント白田までで、MAX鈴木のことはわからない。2階で父親と双子はテレビ東京の『元祖!大食い王決定戦』を見ているようだ。子がわーわー盛り上がる声に混じって、「大食いは海外ではスポーツとして扱われている」父親の副音声も2階から流れ聞こえてくる。わたしのテンションが床下まで下がる。

だけど、こういうたわいない2階の状態を平和と呼んだ方が良いような気もする。子どものTシャツの胸元についたケチャップ混じりの油のシミを下洗いしながら、わたしはさらに一歩平和から遠ざかる。


町田康の『常識の路上』を風呂読しようと持って入浴するも、おもしろいのに読み終わりきれないまま風呂から上がった。